機関投資家という言葉が新聞やニュースでたびたび登場する。機関投資家とはいったい何であろうか?実は機関投資家とは個人投資家と比較した名称で、特定の定義があるわけではないようだ。
大量の資金を使って株式や債券で運用を行う大口投資家のことを機関投資家といい、身近なところでは保険会社や銀行、年金基金、投資信託なども、売買時には機関投資家と呼ばれる。ヘッジファンドに投資するのは機関投資家と説明されることが多いが、実際にはヘッジファンド自身も機関投資家としてニュースで呼ばれることもある。
機関投資家として有名なのはカルパースではないだろうか。カルパースとはカリフォルニア州職員退職年金基金の略称で、39兆円近くの運用資産を持つアメリカ最大の公的年金である。カルパースは物言う投資家として有名となった。近年はスチュワードシップコードといわれる規則に準拠して、投資先に対して適切な対応を求めることとなったため、多くの公的基金が意見を言うようになってきているため、時代の先駆者だったといえるかもしれない。
またそのほかの有名な機関投資家としてノルウェー政府年金基金も挙げられるだろう。ノルウェー政府年金基金はソブリンウェルスファンドといわれる、公的基金として、世界最大級の運用資産を誇り、近年はその運用金額は100兆円を超えているといわれる。
スチュワードシップコードとは機関投資家が守るべき諸原則として定められている約束である。日本版スチュワードシップは下記に記載する7つの原則で構成されている。
(1).機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
(2)機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
(3)機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
(4)機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
(5)機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
(6)機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。
(7)機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。